適当なお話
ある夫婦がいた。
ある日の晩、夫がひどくうなされていた。
夫が苦しく悶え、息も絶え絶えに起きた。
妻が言った。
「お前さん、どんな酷い夢を見たんだい?」
「覚えてねえ」
夫はすぐに返した。
「そんな汗ダラダラで覚えてねえわけ、ねーだろ。さては何か隠し事でもしてるんじゃないか!」
妻と夫は口論になった。
その口論がうるさいもんで、隣の住人がやって来た。
「お前さん、こんな夜中に何があってんだ?」
夫が事情を説明した。
「あーそうかい、妻には言えねえこともあるわあるわ。まぁちょっと俺にどんな夢だったか言ってみろ」
「覚えてねえもんは覚えてねえんだ。」
住人と夫が口論になった。
そこの声がひどくうるさいので家の大家がやってきた。
「こんな夜中になんなんだい」
夫が事情を説明した。
「そんな夢だかなんだで夜中にうるさくするな、まぁいいわしはこの家の大家だ。どんな夢だったか言ってみろ」
「覚えてねえんだ。」
「覚えてねえでこんな口論になるかい!言わねえってんだら家賃を上げるぞ」
「覚えてねえもんは覚えてねえ!」
大家とひどく口論した。
そこに警察官がやってきた。
「こんな夜中に何を口論しているんですか!」
警官が止めに入り事情聴取した。
「そんなことで口論せんでください。夫さん正直にどんな夢だったか言うだけで収まるんです。どんな夢だったか教えてください」
「知らねえもんは知らねえんだ」
警官を口論になり、取り調べを受けるため署に送られた。
酷く取り調べを受けたが夫、知らないものは知らない。
夜も遅かったことから留置所に運ばれた。
留置所には、1人恐ろしく大きな男が座っていた。
腕っ節も太く、刺青がしてあり明らかに街の表を歩けるような人ではない。
「お前さんよ、酷くやつれてるみてーだが何をやってここに連れてこられたんだ?」
夫はビビリながらも事情を説明した。
「おめーさんも不運だな。しょうもないことで妻も大家もお隣さんも警察に嫌われたんだぞ。
そんな誰にも言えねえ夢教えてくれよ」
「知らないんだ、覚えてないんだ」
男は、夢を教えてくれない夫にひどく憤慨し夫をボコボコにした。
意識も絶え絶えで男に首を掴まれる、酷く苦しみ悶えた。
気がつくと夫は自分のベッドにいる事に気が付いた。うなされていたんだ。
妻が心配そうにこちらを見つめている。
妻が口を開いた。
「お前さん、どんな酷い夢を見たんだい?」
これは僕の好きな天狗裁きっていう落語です。
落語はほんと面白いんで聞いてみてください。
仕事に行きます。